株の両建てのメリットデメリット

同じ株を買いと売りで保有する両建て

株式投資は買いから入る人が多いものの、信用取引を使えば売りから入ることもできます。これを利用して同一銘柄を売りと買い両方で保有する「両建て」という方法をとることができますが、これにはどんなメリットデメリットがあるのでしょう?

この両建て、投資家の間でも賛否が分かれており、「メリットは無い」とする声と「メリットはある」という声が入り交じり、投資を始めたばかりの人は混乱することうけあいです。

まず私の立場から結論を言わせてもらえば「通常取引おいて両建てのメリットは無い」となり、私自身株の取引で両建てをおこなったことは信用取引の返済売りを間違えて新規売りにしてしまった時のみ。

ただ、ちょっと特殊な使い方をするとメリットを見いだせることがあるのも事実なので、そのへんも含め両建てのメリットデメリットをできるだけ詳しく解説していきたいと思います。

両建てには基本的にデメリットしかない

仮にAという銘柄を信用買いで1000株、信用売りで1000株保有したとします。

いわゆるこれが両建ての状態で、この状況では株価が上がれば買いの含み益が増える一方、売りの含み損も同じ額だけ増えることになりますよね。

この状態で上昇した場合、勢いが止まったところを見計らって買建玉を売却し、そこからほどよく下落したところで売建玉を返済買いすることで往復で旨味を享受できます。

イメージにするとこんな感じ。

両建てのメリットデメリット

な、なんと利益を生み出す永久機関が!?

両建ては上昇するか下落するか読みづらい局面でのリスクヘッジに使われる…なんて言われるように、とりあえず両建てして利益や損失を固定し状況を見極めながら建玉を決済していく方法が提唱されていたりします。

でも冷静に考えればそれはノーポジション(保有株無し)と何も変わらないですよね。

■両建ては手数料や金利・貸株料の無駄

ある段階において両建てにして利益や損失を固定するのと、その場で決済して保有株を無くしてしまうことの違いは「損益を確定するかどうか」だけです。

例えば30,000円の含み益があるところで両建てしたとして、買建玉の利益が50,000円になったところで返済売りして利益確定すれば含み損20,000円の売建玉が残ります。つまり実質利益は30,000円。

一方、含み益が30,000円の段階で利益確定し様子を見ていても状況は一緒。空売りしたいのであれば利益確定から20,000円分上がったところで新規売りすればよく、わざわざ含み益30,000円の時点で両建てする意味はありません。

逆に下がった時のことを考えてみましょう。

含み益30,000円の段階で両建てしたあと下落し買建玉の含み益が10,000円になる頃には売建玉の利益は20,000円になりますから計30,000円の利益。一方、買建玉の含み益が30,000円の段階で返済売りし20,000円分下がったところまで様子を見ても利益は30,000円。

何が違う?

様子を見たいと両建てしても、利益確定しても結果は同じなのです。

ならば余計な売買によって手数料や毎日の金利・貸株料を支払わない分とっとと利益確定したほうが良いに決まっています。ノーポジになった上で改めてチャンスを伺えばいいのです。無駄な出費がない分勝率が高まるのは言うまでもありません。

細かく取引することでアクティブトレーダー気分を味わいたいのであればまだしも、損得勘定で言えば通常取引での両建ては何の意味もないどころか余計なコストがかかる分利益を圧迫するだけです。

もう一度書きます。両建ては無駄です。

両建てにメリットがあるケース

上でボロクソ書いといてなんですが、通常の取引とは別の目的考えると両建てには大きく2つのメリットがあります。

■信用新規売停止(売り禁)を見越して売ることができる

例えば仕手株に使われている銘柄というのは相場が過熱し出来高が急増、株価は乱高下します。そういった場合株不足や過熱を抑えるために信用新規売停止(売り禁)…つまり空売りできなくなるという措置を取られることがよくあります。

しかし仕手株というのは株価が急騰した後急落するのが常なので、ある程度上がったところで空売りしたいと考えるのは自然なことです。

ただ、出来高急増し株価が急騰しきっている状況ではすでに新規売停止の措置が取られていることが多いので、空売りしたくてもできないケースが大半。

そんな不可能を可能にするのが両建てです。

仕手株といえど上昇し始めの頃は売り禁ではありませんから、急騰や出来高急増を察知し売り禁になる前に素早く両建てすることで信用新規売停止になった後も売建玉を保有することができるのです

その後は仕手株が上昇しきったあたりで買建玉を返済売り、後は急騰後の急落によって大きく下落したところで売建玉を返済買いすれば往復でウハウハ。

ただ、仕手株の中には予想を超える凄まじい上昇を見せるものや、天井と思わせておいて再び急騰するパターンなどがあり、買建玉を売るタイミングが早すぎると売建玉の損失でケツの毛まで抜かれる恐れがあります。

両建ては売り禁に先んじて空売りしておくことで大きな利益を生む可能性がありますが、この方法は一瞬で資金が溶けるリスクもはらんでいるためギャンブル好き以外の人には基本的におすすめしません。

■少ないコストで優待が貰える

株主優待を受け取るためには権利付き最終日に株を保有しておく必要がありますが、翌営業日の権利落ち日には株価が急落することが多く値下がりリスクが付きまといます。

それを回避する方法としていわゆる「優待タダ取り」という両建てを用いる方法があります。ただ、この方法はクロス取引という現物買いと信用売りを使います。

現物の保有で優待の権利を発生させつつ売建玉で値下がりリスクを回避する方法で、これを上手に使うと手数料と貸株料だけで優待を貰うことができるのです。

ただし、この方法はある程度知れ渡っているので人気銘柄ともなると権利付き最終日が近づくにつれ貸株の争奪戦になります。具体的な手順は以下のリンク先で書いていますので、興味がある人はそちらを参照してください。(→優待タダ取りのメリットデメリット

両建ての是非

上でも書いたとおり私自身一般的な取引において両建てにはなんのメリットもないと感じていますが、これは個人の価値観によって異なるもので、両建てを駆使して利益を上げている投資家がいるのも事実。

利益確定をしてノーポジ(保有株無し)になってしまうと、再び売買するタイミングが掴みづらいとか、利確したところからさらに上がってしまうと買いにくいなど心理的な理由で両建てを使う人もおり、そういった点においては「そういう考え方もありなのかな」と感じます。

ただ、利益を突き詰めて考えれば両建ては余計なコストがかかり利益を圧迫するので、基本的には推奨しません。

両建てなど使わず状況に応じてその都度売買を完了させ、上がると見れば高値でも積極的に買っていけるような投資家を目指すべき…私はそう考えます。

あわせて読みたい関連記事



カテゴリ一覧

総ページビュー
ユニークアクセス