優待タダ取りのメリットデメリット

株主優待をリスクなく貰える方法?

権利付き最終日に株式を規定数保有していれば受け取ることができる株主優待は株式投資の大きな魅力のひとつ。そんな優待をリスクなく貰えるとして「優待タダ取り」という方法が多くのサイトで紹介されています。

しかしこの方法、優待を貰えるのは間違いないものの注意点も多く、株式投資の知識がほとんどない人がやるとかえって損をしてしまったりといったことが起こりえます。

証券会社を紹介したいがためだけのサイトが乏しい知識で表面的なことしか書いていないことも多いので、ここではもうちょっと詳しく書いていこうと思います。

優待タダ取りとは

そもそもまず「優待タダ取り」とはどういったものなのか?

株主優待は権利付き最終日に株を保有していることで受け取れるもので、現金である配当と違い商品券や食事券、商品など物品が貰えるため飲食店の食事券やオリエンタルランドのような人気の入場券が受け取れる優待は高い人気を誇ります。

しかし株式を保有するということは常に値動きによるリスクにさらされ、優待で貰える商品以上の差損が発生することも多く、ましてや優待や配当の権利がなくなってしまう権利落ち日の株価は下がる傾向。

そんな値動きのリスクを無くしながらも確実に株主優待を受け取ることができる…それが「優待タダ取り」の考え方です。

それを可能にするのは現物取引による優待権利の発生と、信用取引の空売りによる「クロス取引(両建て)」で、現物買いの株数と信用売りの株数を同数にすることで優待を受け取りつつ値動きのリスクを無くせるという理屈。

確かに一見理にかなっているようにも見えるのですが、手数料や貸株料が発生するため実際にタダになることはなく、購入する株数や使用する証券会社によっては優待以上の額がかかってしまうこともありますし、間違った方法をとってしまうと思わぬ損失を被る可能性もあります。

優待タダ取りのメリットデメリット

では“優待タダ取り”と呼ばれる方法には具体的にどういったメリットデメリットがあるのか見ていきましょう。

■メリット:株主優待を値動きリスクなく受け取れる

優待タダ取りの最大かつ唯一のメリットがこれです。

例えばある銘柄を現物で1000株保有しつつ信用取引で1000株空売りしておいた状態で権利付き最終日を迎えれば株主優待の権利が受け取れつつ翌日の権利落ち日の値下がりリスクも無くなります。

権利付き最終日の前後は様々な思惑によって株価は動くため、値動きのリスクやストレスから解放されるというのは大きなメリットです。

■デメリット:信用取引の口座が必要

信用取引は証券会社に口座を開設した後に別途申し込む必要があり、最初の口座開設とは別に再び審査を受ける必要があり期間も必要になります。

お金もしくは株を借りて行う信用取引とはいえ強制決済がありますので資産以上の損失が生まれることはほとんどなく、それだけに審査も甘いものですが、信用口座が開設されるまで一定期間が必要になるため余裕をもって開設する必要があります。

■デメリット:一般信用取引の空売りができる証券会社が限られる

信用取引には最大6ヶ月しか保有できない制度信用取引と基本的に無期限の一般信用取引があります。

ほとんどの証券会社で制度信用取引は行えるものの、一般信用取引を行える証券会社はある程度限られ、私がメインで使っている業界最安の手数料を誇るライブスター証券では一般信用取引の扱いはなく、次いで手数料が安いGMOクリック証券は一般信用取引を扱っているものの新規買いのみで新規売り(空売り)はできません。

基本的にかなりの大手でないと一般信用取引の空売りは扱っていないものの、後述しますが手数料が安くないと優待タダ取りを行うメリットがないため証券会社はかなり限られてしまいます。

現実的なのは比較的手数料が安く一般信用取引の新規売りができるSBI証券楽天証券になるでしょうか。

■デメリット:優待と手数料・貸株料を計算する必要がある

優待タダ取りを行うには現物取引での往復分の手数料と信用取引での往復分の手数料に加え空売りに際しての貸株料が必要になります。

仮に株主優待が食事券として額面の額が2,000円だったとすれば4回分の手数料と貸株料の合計がそれ以下に収まるようにしないと優待が貰えても損をしてしまうことになります。

株式投資の手数料は証券会社によって大きく異なる上に取引の代金、現物か信用かによっても変わるためそういった面を考慮して事前にしっかりと手数料を計算する必要があります。

基本的に優待タダ取りは逆日歩がかからない一般信用取引での空売りを用いますので、これが行えるSBI証券で考えて見ましょう。

例えば1株300円の株を1000株買って優待タダ取りをしようとすると…

  • ■現物手数料293円×2回=586円
  • ■信用取引手数料206円×2回=412円
  • ■一般信用取引貸株料(短期)30万円×年利3.90%=1日約32円(2日分64円)
  • ■586円+412円+64円=1,062円

貸株料に関してはざっくりとしか計算していないので厳密な数字ではないものの、300円の株1000株(30万円)なら大体このくらいのコストがかかることになります。

ただ優待タダ取りでは信用売りと現物買いを相殺してポジションを解消する「現渡」という方法を使うのが一般的で、これ自体に手数料がかからない上に現物、信用の注文は1回で済むためこちらで計算すると…

  • ■293円+206円+64円=563円

こうなります。

これで数千円の優待が取れればかなりお得になることが分かると思いますが、株価が高く優待の額面が少ない場合は手数料が上回ってしまう可能性もありますので注意してください。

■デメリット:空売りするための株が確保できない可能性がある

一般信用取引は制度信用取引と違い証券会社が確保している株のみの貸し出しとなるため空売りしても逆日歩が発生しないというメリットがありますが、それだけに貸し出せる株数というのは限られています。

そうなると早い者勝ちということになり、優待タダ取りが知れ渡っている現在優待が人気の銘柄は権利付き最終日が近づくと空売りするための貸株の争奪戦が起きます。

そういった銘柄は権利付き最終日やその前日などでは株の確保は困難になりますので、SBI証券でいうなら優待銘柄の多くが短期(5日)の空売りしかできないため日数を逆算した上で受付時間の19時付近に一般信用取引の新規売り注文を出す必要があります。

それで注文が通ればいいですが、注文受付が不可となれば諦めることに。

優待タダ取りの具体的な手順

さて、上記を踏まえいわゆる「優待タダ取り」の具体的な手順を、証券会社はSBI証券、銘柄は決まっており信用口座も開設済みという前提で見ていきます。

■一般信用取引の新規売り注文を出す

株主優待をリスクなく貰うには逆日歩のかからない一般信用取引で空売りする必要がありますが、上でも書いたように近年はこの方法が一般化しており人気の銘柄は争奪戦になります。

SBI証券では優待の付く銘柄の多くは短期(5日)の売り建てしかできないため、それを計算しつつ現渡で決済できる範囲で売り建てを保有するべきなのですが、人気の銘柄ではそれを許してはくれません。

ちなみに現渡を前提とした取引の場合は…

現渡可能な優待タダ取り

短期売りは5営業日しか保有できないためこのカレンダーで行くと権利落ち日を含めた5日前…つまり23日以降に注文が約定する必要があります。

このスケジュールですと権利落ち日である27日に現渡すれば手数料も片道分で済むためコスト的にもベストといえます。

しかし優待が人気の銘柄だとそうはいかず、20日夜〜行うであろう23日約定の新規売り注文はまず通らないと見るべきで、もう一日早める必要が出てきます。

強制決済覚悟の優待タダ取り

23日に1営業日前…つまりこのカレンダーでは20日に注文を約定させると権利付き最終日である26日が期限となってしまうのですが、そのまま放置すると翌27日に強制決済…つまり強制的に買戻し注文で決済されます。

「強制決済」と聞くといや〜な印象しか抱かないと思いますが、特にペナルティがあるわけではなく、またこの場合は26日をまたぐため優待の権利が発生することになります。

ただこの場合強制決済となりますので現渡が行えず手数料は現物、信用共に往復分かかってしまうことになりますし、現物での買いを27日の寄成(取引開始時の成行注文)で売らないと差損が発生する可能性があるので注意しましょう。

ちなみに、SBI証券での一般信用取引の新規売り受け付けは19時から始まり、強制決済を視野に入れた上記スケジュールでは19日の19時付近は貸株の争奪戦になります。

1分1秒が明暗を分けることになりますので、19時の少し前からPCやスマホに張り付き細かく注文を出します。当然ながら成行で注文することになり、注文が通ればOK、注文不可で受付できない場合は諦めるか、翌日に賭ける必要があります。

■現物の買い注文を出す

一般信用取引の新規売り成行注文が出せたのを確認したら同じ株数の現物買い注文を成行で出しておきます。

こうすることで翌日の新規売りと現物買いが同時に行われ約定価格を同じにすることができるため、株価によるリスクをゼロにすることができるのです。

■売買の注文は必ず取引時間外に行う

上記のように信用売りは19時付近に行う必要があるため自動的に取引時間外になっていますが、新規売り注文が通ったのを確認したら現物の買い注文も忘れないうちに成行ですぐに入れておきましょう。

もちろん株数は売りと買いを同数にしておくのが前提です。

信用取引の新規売りさえ通ってしまえば現物を買うのは26日でも構わないのですが、そうなると買値と売値に差ができてしまいそこに損が発生する可能性があるからです。

時間外に成行注文を出しておけば次の市場の寄り付きで同時に注文が通るため現物買値と信用売値が同額となり値動きによるリスクはなくなります。

これは強制決済を使った方法でも同様で、27日に強制決済される場合はその日の市場が開く前に現物の売り注文を成行で出しておきましょう。

■強制決済を使わない場合は必ず現渡を行う

強制決済を視野に入れた取引でない場合は権利落ち日に必ず現渡注文を出しましょう。

優待が絡む株の一般信用取引の新規売りの多くは5日と短期しか保有できないため、権利が確定したら速やかに現渡してしまわないと数日後には強制決済になり現渡できなくなり余計な手数料がかかってしまうからです。

1日数十円程度ではあるものの貸株料もかかっているので無駄を排すためにもとっとと現渡注文を出してしまいましょう。

優待タダ取りの是非

さて、いわゆる「優待タダ取り」について長々と書いてきましたが、実際にここまでして優待を貰う必要があるのかという点に関しては賛否あります。

手数料や貸株料を含めれば実質1,000〜2,000円程度の旨味しかない場合も多く、そのために多くの時間を割くというのも非効率な気がするのは確かです。

この辺は個人の価値観が大きいですし、「優待を受け取る」ということ自体に面白みや楽しさを感じる場合もありますので何とも言えないところですが、興味のある人はまず試してみてから続けるかどうかを決めればいいでしょう。

ただ、「間違って制度信用取引でやってしまった」「注文を間違えた」などで思わぬ損失が出てしまうことがありますので、そこは慎重に行うようにして下さい。

…なんかまだ書き忘れている気がするから気付いたら追記します。

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