消費税と景気の関係
この記事を書いている2011年5月現在消費税は5%です。
そしてここ最近「2015年度までに消費税を10%に引き上げる」という話が持ち上がっています。
という訳で、消費税増税が景気にどれだけ影響するか私なりに調べ、考えてみます。
消費税に限らず何かしらの増税前には必ずと言っていいほど駆け込み需要が発生しますが、過去の消費税引き上げ時にはどの程度の駆け込み需要が発生したのでしょうか?
『1989年4月消費税導入による影響』
年度 | 効果(兆円) | 対個人消費比率(%) | 対GDP比(%) | 実質GDP伸び率(%) | |
---|---|---|---|---|---|
駆け込み需要効果 | 1988年度 | 0.408 | 0.18 | 0.10 | 6.7 |
押し下げ効果(一年目) | 1989年度 | ▲2.2425 | ▲1.02 | ▲0.55 | 4.3 |
押し下げ効果(二年目) | 1990年度 | ▲0.964 | ▲0.39 | ▲0.21 | 6.0 |
『1997年4月消費税引き上げによる影響』
年度 | 効果(兆円) | 対個人消費比率(%) | 対GDP比(%) | 実質GDP伸び率(%) | |
---|---|---|---|---|---|
駆け込み需要効果 | 1996年度 | 0.681 | 0.24 | 0.13 | 2.8 |
押し下げ効果(一年目) | 1997年度 | ▲7.141 | ▲2.51 | ▲1.37 | ▲0.1 |
押し下げ効果(二年目) | 1998年度 | ▲3.531 | ▲1.23 | ▲0.68 | ▲1.3 |
上記は内閣府のデータとある研究機関による「仮に消費税増税が無かった場合の推測値」から計算した値ですが、このデータを単純に見ると消費税増税による影響はかなり大きいと言わざるを得ない。
この表を書いていて驚いたのが1990年以前の日本のGDPの伸び率です。
この頃はいわゆるバブル絶頂期ですが、私はまだ社会に出ていなかったのでバブルを実感する事はありませんでした。
しかしこのバブル絶頂期の日本ですら駆け込み需要はあり、その後の需要先食いによる反動などの消費の押し下げ効果が確認できるのだからバブル崩壊による後遺症に苦しんでいた1997年の消費税引き上げによる多大な影響は想像に難くない。
ちなみに実質GDPの伸び率は基準年などの影響か、調べる所によって若干のバラツキがあるので「この数値は違うよ!」というツッコミはご容赦下され。
で、話は戻って2015年度までに10%に引き上げるという話ですが、今この記事を書いているのが2011年度なので、あと4年以内に5%引き上げて10%にするという事になります。
今の不安定な世界経済はもちろん、日本は震災に見舞われ原発問題は全く収まる気配がなく「年単位かかるのでは…」と言われています。
消費税引き上げまでに経済が安定的な上昇に転じていればまだしも、仮に現状のような低空飛行を続けていた場合はどうするのでしょうか?
とはいえ日本の900兆円を超える借金や復興支援、膨らむ一方の社会保障費など“金”に関わる問題は山積で、まさに待ったなしの状況なのは間違いなく、特にここ数年の赤字国債発行額は40兆円を超えており、今年はとうとう税収を上回る国債発行額になってしまいました。
そう考えると大幅増税もやむなしなのは理解できます。
理解はできますが、まず腐るほどある無駄をどうにかしないと国民の理解は得られない。
公務員削減、国会議員削減はもちろん、独立行政法人や天下り先への不透明かつ膨大な金の流れ、ふざけた利権によってどれほどの金が流れているのだろう?
今の日本の状況を見れば消費税増税はやむを得ないだろう
私を含めそう考えている日本国民は多いでしょう。
だが、まず真っ先に無駄の削減を徹底的にやって欲しい…というか、やれ!
それでも仮に5%から一気に10%まで消費税が上がったら景気へのダメージは相当なものになるでしょう。
1997年のデータを見ても明らかで、これは当時の総理大臣だった故橋本龍太郎元首相も2001年の総裁選に出馬した際に反省の弁を述べています。
まあ1997年の場合は消費税増税だけにとどまらず、特別減税の打ち切りなどが同時に行われたためにこれだけ大きな影響が出たのでしょう。
過去の反省を踏まえ、大幅な消費税増税を打ち出すのなら、他方面…例えば社会保障の充実や年金問題の抜本的な改革など、将来の不安を取り除くような政策を打ち出すのが筋だと思うのですが…。
日本の消費の弱さの一端には将来に対する不安が横たわっている事は間違いない。
これを解決して老後に安心感を与えればまた違った結果が見えてくると思いますが、結局社会保障を充実すれば膨大な財源が必要になるというジレンマも…
ここ10年ほどサラリーマンの平均所得は徐々に減ってきています。
2002年からの景気拡大は「いざなぎ景気」を超え戦後最長となり過去最高益を更新する企業が続出しましたが、大企業は内部留保を増やすばかりで従業員に還元してきませんでした。
そんな事しているうちに2007年にサブプライムローン問題が表面化し、翌年のリーマンショックで世界経済はガタガタになり、今まで上がらなかった給料はさらに下がり、消費は冷え込む一方でしたが、やっと回復の兆しが見えてきた2011年に大震災。
この状況で消費税を上げたらどうなるかは素人でも簡単に想像できるでしょう。
景気、消費税増税、無駄の削減、社会保障の充実…複雑に絡み合った問題をいかにクリアして国民の理解を得ていくか…そして国民に「国への信頼感と将来への安心感」を与えられるか…
政治の力が試される時です。
…が、今の票の事しか考えていない政治家には100%無理だと言い切れる自分がいる…
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