円相場はインフレより金利差?

2012年11月14日、当時の与党であった民主党の野田総理大臣が衆議院の解散を明言した直後から急激な円安、株高が進みましたが、この当時にはまだ「インフレ」というキーワードは無く、為替相場の方向性を決める大きな要因は「金融緩和」でした。

衆議院の解散後、勝利が確実視されていた自民党の安倍総裁(当時)による2%という明確なインフレ目標と、日銀に対する強い金融緩和圧力により、円安と株高がさらに進む事になり、3ヶ月で株価は30%上げ、ドル円も79円から94円くらいまで、約15円ほど円安に振れました。

この急激な円安は、インフレ期待より強い金融緩和期待によってもたらされたものですが、金融緩和は貨幣の流通量を増やすものですから、需要と供給の関係上、供給の増えた貨幣の価値は下がり、「お金の価値が下がる=物価が上昇する」とインフレに繋がっていく。

そこから分かるのは、基本的にインフレは円安を引き起こすものであるという事実で、私が投資を始めた時に起こっていた「円キャリートレード」や「インフレ→金利上昇→通貨高」という流れが異常であり、やはり私の「インフレ=円高」の認識は間違っていたという事になります。

しかしそう断定してしまっては「インフレ=円安」という世の一般論と何も変わりがない。

前ページの冒頭で私が「インフレになれば、今はどちらかというと円高じゃない?」と言った根拠となる「金利差」と「為替相場」の関係をチャートにしたものをちょっと見てみましょう↓

日米の金利差とドル円相場の推移

2000年代半ばから始まった、金利の低い円を売って金利の高い外貨を買う「円キャリートレード」の活況以降現在に至るまで、金利差と為替相場には明らかな相関関係が見て取れますが、それより以前に目を向けると金利差と為替相場に明確な相関関係は認められない。

金利を上げる場合、基本的に景気の過熱やインフレを抑制するためのもので、逆に金利を下げる場合は景気の浮揚効果を狙ってのものが多い。

リーマンショック以降各国はこぞって金利を下げてきましたが、アメリカは…というか、日本以外でデフレに陥っている国はなく、緩やかなインフレにも関わらず強い景気後退懸念から金融緩和(利下げ)の方針を採っている。

ですから、サブプライムローン問題やリーマンショック以降は「他国=インフレ : 日本=デフレ」となっており、円相場も急激な円高に振れていますから、「インフレ=通貨安」という一般論は正しい事になりますが、キャリートレード全盛期は全く逆の動きをしていました。

近年の円高も、「他国がインフレで日本がデフレだから円高になっている」というよりは、「金利差」と「金融緩和」が大きなテーマになっていて、「インフレ=通貨安」は結果論になっている感さえある。

では、結論としてインフレと通貨安は結びつくのか?

次のページで短期的、長期的な視点から結論を出していきます。

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