インフレだと円安?円高?どっち?
先日、友人とインフレやらデフレやらの話をしていた際、インフレと為替レートの関係についてちょっとした議論になりました。
友人曰く…「インフレになればお金の価値が下がるのだから円安になる」
私曰く…「本来の為替のしくみはそうだけど、今はどちらかというと円高傾向じゃない?」
ふむ、難しい問題です。
普通に考えればインフレになると「物価が上がる=円の価値が下がる」訳ですから円安になって然るべきで、そういった理論を分かりやすく表した「ビッグマック指数」というものも存在するくらいです。
しかし2008年のリーマンショックまで続いた「円キャリートレード」を思い出してみて下さい。
その当時は日本を除く先進国がインフレで金利が上がり、ドルが5.25%、ユーロが4.25%、英ポンド6.75%、豪ドル7.25%、ニュージーランドドルに至っては8.25%と今では考えられない高金利になっておりました。
「インフレ=通貨安」と考えればデフレ下の日本の円が独歩高になってもおかしくない状況でしたが、金利の安い円を借りて金利の高い諸外国の通貨を買い金利差の利ざやを稼ぐ「円キャリートレード」で円はほぼ一貫して売られ円安一直線でした。
これはFX(外国為替証拠金取引)の普及で個人でも気軽に通貨を取引できる環境になった事で、「持っているだけで金利が毎日手に入る」というメリットを享受しようと一斉に円を売ったため、円キャリートレードに拍車をかけたのでしょう。
為替相場が単純に各国の物価などのバランスで成り立っているのであればインフレは通貨安に直結するはずですが、インフレと一口に言ってもその形態は様々で、国家の危機的な状況でインフレになる場合もあれば安定的な経済成長によって理想的なインフレになっている場合もあります。
少なくともリーマンショック以前の各国は後者で、好景気によって理想的とされる年1~2%のインフレに抑えるため利上げされ、それでも好景気を維持していました。
つまり好景気による旺盛な消費などによってインフレが引き起こされる場合、一般的に中央銀行は金利引き上げなどの引き締めを行いますが、それが上手く機能しているのであれば、現状ではインフレであっても金利差などによってその国の通貨は買われる傾向にある…というのは現在でも比較的高金利の豪ドルやNZドルが買われている状況を見ても明らかです。
ただし好景気以外でのインフレ…国が不安定だったり、原材料の高騰などによって引き起こされるもの、景気が停滞しているにも関わらずインフレを起こすスタグフレーションなどでは当然その国の通貨は売られやすくなります。
現在のグローバルな国際社会において円高・円安は国のファンダメンタルズ(基礎的要因)はもちろん国際情勢や他国との兼ね合いなど様々な要因が影響しており、インフレ・デフレはあくまでも一つの要因と言わざるを得ない。
専門家でも意見の分かれるこういった議論に、経済の素人である私と友人との議論で明確な答えなど出るはずもないですが、次のページでは「金利差」をテーマにインフレと通貨安について考えていきたいと思います。
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