ダウの犬の致命的な問題点
NYダウ構成銘柄30種のうち、配当利回りが高い銘柄を10種類選んで投資する方法である「ダウの犬」は、様々な“実績”を引っさげ、安定的な収益を目指す投資家から注目されており、前ページでも紹介しましたが、ダウの犬が確かな成果を上げているといういくつかの根拠の中にあるものを紹介すると…
■1957~2006年の50年間の配当再投資後のリターンは年平均+14.1%で、ダウ平均(同+11.9%)を上回っている
■NYダウ採用30銘柄を高配当利回り順に並べ上位10銘柄のうち株価の安いものから5銘柄を選んで投資していくと、1973年から25年間で元本が134倍になる成果が得られた
というものがあり、確かにこれら成果や実績を見ればダウの犬の優位性を感じずにはいられませんし、注目を集めるのも分かります。
しかしちょっと待ってください。
この「ダウの犬」は運用会社を経営するマイケル・オヒギンズ氏が1991年に提唱したもので、上記の実績や成果はあくまでも「過去の値動きや配当からの検証結果」に他ならず、実際にダウの犬で運用したものではありません。
これが何を意味するのか?
それは過去の都合のよい期間だけ抜き出しダウの犬の投資法を当てはめれば、いくらでも良い結果をはじき出せるという、いわば「後出しジャンケン」と同じで、それは日本のTOPIXコア30を用いたダイヤモンドZAiでの検証結果でも顕著となっている。
この検証結果は以下の通りなのですが…↓
1992年12月~2006年12月までの15年間でTOPIXが2.5%しか上昇しなかったにも関わらず、TOPIXコア30から配当利回り上位5銘柄を選んで保有し続けた結果、15年のリターンが214%と80倍以上の差が開き、ダウの犬の有効性が実証された。
…というもの。
確かにこの話だけを見聞きすれば「ダウの犬ってすごい!」となります…が、この検証結果に使われている15年間を含めた株価の動きを見てみると…
上図の赤線の中が検証で使われた期間なのですが、検証開始の1992年12月というのはバブル崩壊により株価が急落し、日経平均株価が16000円~17000円くらいまで突っ込んだ時期で、検証終了の2006年12月というのは、2007年9月に起こったサブプライムローン問題の表面化により株価が急落する前の、いわば近年の「絶頂期」で、やはり株価は17000円前後です。
まあこの検証では同じ株価水準でTOPIXにほとんど変化の無い状態で、なるべく長期にわたってダウの犬の有効性を実証したかったのかもしれませんが、大暴落後の底値から株価回復期の天井付近を抜き出すというのは、何か意図的なものを感じざるを得ない。
結果論から導き出した検証にどれだけの価値があるというのか?
もちろんダウの犬自体に問題がある訳ではなく、これら“検証”自体に問題があるわけで…そこら辺の問題点とダウの犬の正しい使い方も含めて次のページで書いていきますので、もう少しお付き合い下さい。
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