景気に対する公共事業の経済効果
景気が悪くなってくると必ずといっていいほど「公共事業を増やしてお金を回すべき」という話が聞こえてきます。
説明する必要もないとは思いますが、公共事業とは国や地方がお金を出して行うサービスの事…ですが、大半は箱物や道路、ダムなどといった建築業界や土木関係に与えられるお仕事の事で、日本の政治家が大好きなアレ。
現在の日本では国内総生産(GDP)も伸び悩んでいる事から、GDPの計算上1兆円の公共事業(政府支出)をするだけでGDPを1兆円押し上げる効果があり、かつそこから連鎖的に消費を拡大させる期待も持てる公共事業は夢のような存在…という神話がある。
そもそもなぜ公共事業が必要なのか?
公共事業の必要性を説く上でよく名前が挙がるのが「ケインズ」であり、ケインズが提唱した乗数理論や乗数効果を根拠に公共事業の正当性を訴える事が多い。
この「乗数効果」にはちゃんとした計算式が存在し、数字という目に見えるものでその効果、理論を証明できるのですが、ちょっとややこしいので計算式はスルーで説明していきます。
仮に国が公共事業に1兆円支出したとします。
この時点ですでにGDPには1兆円上乗せされ(厳密には用地取得費は含まれない)、発注先が建築関連業界であれば業界に1兆円のお金が回る事になり、仕事が増える事によって雇用が創出されますし、従業員などの給与も増えます。
建築業界に従事する人間の収入が増えれば当然消費も増えますから、そういった消費が他業種にも回って収入を増やし、そうやって増えた収入によって消費が増えますから、増えた消費によりさらに他業種へお金が回る…
そうやって様々な業界に効果が波及して相乗効果を生む事を「乗数効果」と呼び、国が支出した1兆円は回りまわってGDP的にも実経済的にも数倍の効果を生むとされています。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざがあり、この公共事業による乗数効果はこれに近いものがありますが、
しかしこれは机上の空論であり理想論でもあります。
確かにバブル期までは公共事業による経済効果は大きかったようですが、経済の成熟に伴い現在の日本では公共事業の景気への影響度は確実に減っています。
しかもバブル崩壊後の不況による教訓で企業は従業員の給料は増やさず内部留保を増やすようになり、また派遣社員などの非正規雇用が広がった影響もあって平均給与は下落の一途を辿っています。
それに伴い株式の配当などは増えていますが、株式の配当が増えても裾野の雇用や給与は増えませんから、上記のような乗数効果は期待できません。
公共事業の多くは土木事業であり、それはゼネコンに多くのお金をつぎ込んでいる事に他なりませんが、これは「経営の苦しいゼネコン救済」という側面もありますし、先の震災での復興支援の多くもゼネコンが潤っただけで地元は潤わなかったと言われています。
この辺は昔からいわれるように、ゼネコンと政治家や官僚の癒着と利権が見え隠れします。
ただ、公共事業というのは雇用や給与といった直接的な効果以外にも、道路建設であれば周辺の活性化なども期待できるという側面もあります。
その辺も含めて次のページで考えていきます。
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