IPOなどで見聞きするストックオプションとは
新規公開株(IPO)で重要な意味を持つ
株式投資はハイリスクハイリターンの投資であるため大きな損失を恐れて二の足を踏んでいる人も多いと思いますが、新規公開株(IPO)はリスクが少なく参加している人も多いでしょう。そんなIPOでよく見聞きするのがストックオプション。
IPOのサイトや雑誌なのでは必ず載っているこのストックオプションですが、よく意味が分からないまま抽選に応募している人も多いのではないでしょうか?
確かにストックオプションのことをよく知らなくても各社の予想などを見れば上がりそうな銘柄の判別は付くものの、IPOを、ひいては株式投資をより深く知るためにもストックオプションについて勉強してみましょう。
ストックオプションとは
IPOなどで一般的に使われるストックオプションとは企業の役員や社員といった従業員が自分の会社の株を買うことができる権利のことを指します。
いわゆる自社株買いにも近いものがありますが、一般的な自社株買いは企業が自社の株を買い株式を消滅させることで1株当たりの利益を増やし株主に還元するのに対し、ストックオプションは社員への報酬、ボーナス的な意味合いが強いのが特徴。
社員や役員が自社株購入の権利を取得したとしてもストックオプションを行使できる期間というのは決まっていて、多くの場合「〇年後の△月~〇年の□月まで」といった感じに。
また期間と共に買取額や株数も決まっており、例えば「2018年10月1日~2025年9月30日までの間に1株1,000円で10,000株買える」といったようにあらかじめ決められています。
企業は社員のストックオプション行使に際し株式市場から株を買い入れるか、もしくは新株を発行することになります。
ストックオプションのメリットデメリット
ストックオプションは企業側、社員側にとって様々なメリットがある一方でデメリットも存在し、代表的なものを挙げると以下のようになります。
■ストックオプションのメリット
- ■企業は現金を用意する必要がない
- ■株価が上がれば社員の報酬が増えることになり士気の向上が見込める
- ■優秀な社員を繋ぎとめておくことができる
- ■社員や役員としては自分たちの頑張りが報酬に直結するためやりがいになる
ストックオプション最大のメリットは企業の価値を上げること…すなわち仕事面で業績を上げることが社員の報酬に直結するという点で、企業価値を高め社員に還元する・されるという目標を企業・社員と共有できます。
「安定した給料さえもらえればいい」という人間が増えている昨今、このメリットが会社側にとっていかに大きいかは語るまでもありません。
■ストックオプションのデメリット
- ■ストックオプション行使後に人材が流出してしまう可能性がある
- ■新株を発行する場合株式の希薄化で既存の株主に不利益が生じる
- ■株価が下がると士気の低下に繋がる
ストックオプションにはデメリットも存在します。
株価は業績が良いからといって必ずしも上昇するとは限らず、世界経済や情勢によっては大きく下落することも十分考えられ、仮に行使価格を下回るようなことがあると社員にとってストックオプションは意味のないものになってしまい士気の低下に繋がります。
なぜならストックオプションはあくまでも「○○円で自社株を買える」という権利であって株式を貰えるわけではないため、株価が行使価格を下回ってしまえば権利を行使すると損をすることになるからです。
一般的にはその時の市場価格より安く設定されますが、株価は水物なので将来どうなるか分からない…というのは大きなデメリットでもあります。
IPOにおけるストックオプション
さて、ストックオプションがどういったものか大体分かっていただけたところで本題のIPOでのストックオプションの意味について触れていきます。
IPOにおいてストックオプションの情報が載っている場合、以下のような感じで掲載されていると思います。
仮にこの銘柄の上場が2016年10月30日に行われるとすると上の2つのストックオプションは行使期間に入っていることになります。多くの場合ストックオプションを行使した社員は売却し差益を得ようとしますから、計28,000株が新規上場時の売り圧力になる可能性が考えられるのです。
また上から3段目のストックオプションも上場から約2ヶ月後には行使期間に入り、所有を続ければそのころには35,200株の中の大半が売りに出される可能性を示唆することに。
場合によっては公募価格が1株数千円なのに対し初期のストックオプションでは行使価格が数十円なんて場合もあり、差益の大きさ、IPOは初値が高くなる傾向などから大きな売り圧力になることが予想されるのです。
IPOでストックオプションが足かせになる例
では実際にストックオプションがIPOの初値形成において大きな影響を与える例について少し触れてみましょう。
これは私が以前SBI証券で400株当選するも危険な香りがしたため辞退したものを例に取ります。その銘柄は2016年10月27日上場のアイモバイルという企業です。
この株は公募株式総数5,550,000株という大型案件で公募価格は1,320円。
それに対してストックオプションを見てみると…
なんと4円で行使できるストックオプションが2,880,000株もあり、しかも行使期間に入っている。
皆さんがアイモバイルの社員だったとして、1株4円で買える株が1,320円で上場するということになったらどうしますか?仮に10,000株行使できたとすれば4万円が1320万円に化けるのですから即行使して速攻売りますよね。
こんな爆弾が公募株式数5,550,000株に対して2,880,000株あるのですから常識的に考えて初値が上がらない言うまでもありません。
ちなみにこのアイモバイルの株価がどうなったかも見てみます?
これを書いている現在は上場から2ヶ月ほどしかたっていませんが、上場初日に高値1,297円を付けてからは見てのとおりの推移。つまり一度も公募価格を上回っていないことになります。
迷ったけど辞退して良かった…心底良かった…
ストックオプションのまとめ
以上、ストックオプションを簡単に説明してみましたがいかがだったでしょうか。
ストックオプションは企業や従業員にとっては色々とメリットがあり、また企業価値を高めようという機運は株主にとってもプラスになりますが、IPOに限って言えばデメリットがほとんどです。
IPOの初値形成や上場後の値動きに対しストックオプションは無視できない要素ですので、新規公開株の銘柄選定の際には必ずチェックするようにして下さい。
そして、ストックオプションが積み上がっている銘柄に当選してしまった場合は私のように辞退するという選択肢も視野に入れるようにしましょう。
最後に、IPOの当選を考えるなら取扱数が多く。、また資金がものをいうSBI証券と違い完全抽選のマネックス証券への口座開設は忘れないようにして下さい。私は2016年マネックス証券でJR九州が当選し5万円の利益が出ました。
あわせて読みたい関連記事
信用取引は現物取引に比べ圧倒的に安い手数料が魅力のひとつです。しかし毎日金利や貸株料がかかるというデメリットもあり、「何日くらい保有すると現物より高くつくんだろう?」と考えたことはありませんか?その疑問に応えるべくいくつかのパターンで計算してみました…続きを読む
いざ投資をはじめようとした時「株にするかFXにするか」で迷う人は多いと思います。FXと株式投資どちらが儲かるかは人によって、もしくは投資法によって変わりますが、これらの特徴やメリットデメリットを詳しく解説しますので今後の投資に活かしてください…続きを読む
株価というのは良い材料が出れば上がり、悪い材料が出れば下がるとされています。しかし実際は全体の地合いやトレンドがものをいい、どんなに業績が良くても地合いが悪かったりトレンドが下降気味だったら株価は下がり、逆に業績が悪くても地合いが良ければ株価が上がる…続きを読む
株主優待をリスクなく貰う方法としていわゆる「優待タダ取り」というものがあります。厳密には手数料や貸株料がかかるためタダにはならないものの、銘柄を選べばかなりお得になります。しかし色々と注意点やデメリットもありますので損をしないための具体的な説明をしていきます…続きを読む
信用取引の場合2013年1月から差金決済が解禁され同一資金でいくらでも取引できるようになりましたが、現物取引の場合は差金決済が禁止されており同日中の同一資金による同一銘柄の取引は1往復までしか行えません。分かりやすく詳しい仕組みを見てみましょう…続きを読む
委託証拠金が不足し追証が発生しつつも、それを無視し期限を過ぎてしまったらどうなるのか?私自身が経験した追証から建玉を損切りしたものの結局信用取引を停止され、その後信用取引口座継続の意思確認を経て信用口座が復活した経緯を書きます…続きを読む
割安感を測る指標としてPER(株価収益率)は投資判断でよく用いられ、一般的に数字が低ければ「割安」とされますが、“マイナス”のPERはどうなのでしょうか?これは前期や今期予想などが赤字の場合に見られ、指標として意味を成しませんがV字回復への期待を込めて買うという方法も…続きを読む
株式投資とギャンブルの違いは胴元がいるかどうかもそうですが、やった後に何も残らないギャンブルと違い投資を始めると経済に敏感になり、結果経済の勉強になりますし、世界の人々が集う市場に参加するというのは閉鎖的なギャンブルの世界とは全く別物です…続きを読む