自社株買いの是非
わざわざお金を出して自社株を買う意味
前のページで自社株買いについて書いてきました。
自社株買いは実質的に発行済株式総数が減るため、一株当たりの純利益(EPS)が増え結果株価が上昇するわけですが、そもそも自社株買いは企業の内部留保などの現金で行うもの。
つまり企業の余剰資金を減らして自社株を買う訳で、結局±0なのでは…
こんな疑問を感じたりしませんか?
発行済株式総数が減れば確かに一株当たりの利益は増えますが、企業の価値とは内部留保まで含めてのものなので内部留保を使って自社株を買うのであれば企業の価値自体には変動はないはず…という考え。
これには「自社株買いをすれば自己資本比率は下がって有利子負債の比率は上がり、結果として資本コストが下がって企業価値や株価は上がる」という、ちょっとややこしい反論がある一方、「 自社株買いが株価を上げる効果は経営陣が自社の株価が割安と印象付けるアナウンスメント効果によるものだけ」という意見もあります。
まあこの辺の難しい問題はさておき、自社株買いを行うと多くの場合株価上昇に繋がるのは事実です。
そういった意味では確かに株主に利益を還元しているとも言えるのですが、株主への利益還元の方法は色々あり必ずしも自社株買いか最良の方法とは言い切れません。
なぜ配当ではなく自社株買いなのか?
株主に利益を還元する方法として真っ先に思い浮かぶのが「配当」を上げる「増配」で、これも株価上昇の材料になりますし、長期的に株主を繋ぎとめておくという面でも有効です。
そしてもう一つが設備などへの投資です。
これは自社株買いや増配と違い短期的なインパクトはありませんが、長期的に見た場合企業の価値を高める可能性が高く、そういう意味でも株主への利益還元と言えます。
自社株買い、増配、設備投資…余剰資金、内部留保をどのように使うかはケースバイケースですが、ちゃんとした将来設計に基づき設備投資をするのであれば、長期的に株価の上昇に一番有効だと私は感じます。
安易な増配や自社株買いは短期的なインパクトはありますが、裏を返せば余剰資金や内部留保の有効的な使い方を見出せていないとも取れるので、自社株買いに至った経緯などやタイミングも吟味したほうが良いかもしれません。
ちなみに最近の自社株買いは多くの場合企業が買い上げた自社株を保有する「金庫株」が主流で、自社である程度の株を保有し、尚且つ株価も上昇することでM&A(買収)のリスクを減らすメリットがあります。
別ページの「株価が企業に与える影響」でも書いていますが、株価が高いと企業にとっても様々なメリットがあるので、実は自社株買いは表向きには「株主への利益還元」を謳っていても、その実企業にとってのメリットを最優先しているのかもしれません。
…まあ私が保有している株の企業が自社株買いを発表したら…諸手を上げて喜びますがね。
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