貿易収支の黒字や赤字とは?
経済関連のニュースや新聞など見ていると「経常収支」や「貿易収支」の赤字、黒字といった内容をよく目にします。
特に「貿易収支」はよく使われる言葉で、ハッキリとした意味は分からなくても、漠然と「輸入や輸出に関して赤字だったり黒字だったりするんだろうな」という認識を持っている方が多いと思いますが、輸出に頼る日本において貿易収支は極めて重要な意味を持つので、株などの取引で経済に触れているのであれば、ちゃんとした意味を知っておいて損はないでしょう。
…と言っても、貿易収支の求め方は極めて単純で…↓
輸出額-輸入額=貿易収支
…となり、輸出額が輸入額を上回れば「貿易黒字」で輸出額が輸入額を下回れば「貿易赤字」となります。
日本は輸出大国ですから第2次石油危機で原油価格が高騰した1980年の貿易赤字を最後に30年間貿易黒字が続きましたが、2011年は31年ぶりに貿易赤字に転落しました。
その理由は2011年3月11日に起きた東日本大震災やドル円で80円を切る超円高、海外の景気低迷などが重なり輸出が減少する中、震災で起きた東京電力の原発事故の影響で火力発電の依存度が増え、火力発電用の燃料の輸入が増えたためです。
ちなみにこの「貿易収支」の黒字や赤字は為替相場にも影響を与えます。
具体的には輸出額が多い「貿易黒字」になると、日本はより多くの外貨を得る事になるのですが、当然外貨は日本円に換金しなければならないので外貨を売って日本円を買う事になり、結果円高に振れやすくなり、逆の「貿易赤字」は輸入が多いため日本円の支払いが増える事となり、日本円を得た外国は円を売って自国通貨に換金するので円安傾向になるという仕組み。
日本経済にとっては輸出が優勢な貿易黒字の方が良いに決まっていますが、貿易黒字になると輸出の足を引っ張りかねない円高になりやすいという面もあり、逆に日本経済にとって望まない貿易赤字だと、輸出の追い風になる円安に振れやすい…「経済って上手くバランスが取れているな」という印象を受けます。
ただ2007年のサブプライムローン問題まで続いた「円キャリートレード」時には多額の貿易黒字が出ていたにも関わらず円の金利の安さからどんどん円安に進んでおり、貿易収支が為替に与える影響というのはあくまでも要因の一つであるという認識でよいと思います。
日本が長らく貿易黒字を続けてきた背景には日本の大企業が輸出により利益を上げてきたからに他ならないのですが、近年の円高によりその利益は圧迫され、生産拠点を海外に移す動きが活発化しており、今までは製品を輸出していたものが部品などを海外の生産拠点に輸出し、製品を逆輸入するという状況が生まれ、円高共々貿易収支に大きな影響を与えております。
こういった状況に加え、東京電力の原発事故により、日本中の原発が稼動を中止し火力発電に頼らざるを得ない状況から燃料の輸入がかさんでいる現状は当面続くと見られ、これからの日本の貿易収支はかつてのような黒字続きとは行かなくなるかもしれません。
貿易収支は日本の経常収支を形成する4つの収支データの一つで、経常収支の中でも一番注目され、そして重要度も高い項目です。
現在貿易収支は赤字化しましたが、経常収支は黒字を維持しております。
しかしもし経常収支までが赤字化したら…借金大国日本は大変な事態に陥る可能性が…
次のページでは経常収支の黒字や赤字と、その影響について書いていきます。
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