経常収支の黒字赤字と、その影響
日本は長らく「輸出大国」と呼ばれ、貿易収支の黒字が当たり前であり、その貿易収支をはじめ、サービス収支、所得収支、経常移転収支からなる「経常収支」もまた黒字が当たり前で、現行統計を開始した1996年1月以来黒字を続いております…というか、続いておりました。
ちなみに経常収支を構成する4つの収支の内訳は…
■貿易収支 … 上記のように輸出額と輸入額から算出する収支
■サービス収支 … 国境を越えたサービス(輸送、旅行、通信、建設、保険、金融、情報等)
の取引による収支
■所得収支 … 日本企業が海外で得た収益から、外国企業が日本で得た収益を引いたもの
■経常移転収支 … 発展途上国への援助や、出稼ぎ外国人の母国送金、日本人留学生
への仕送りなど
…となっており、日本は貿易収支と所得収支を柱に大幅な経常収支の黒字を続けたきたのですが、東日本大震災に伴う原発事故の影響で、火力発電に使う燃料費などがかさみ貿易収支は大幅な赤字に陥り、2012年11月、12月と2ヶ月連続で経常収支も初の赤字を記録しました。
経常収支が黒字という事は、乱暴に言うと国内のお金で日本の経済活動がまかなえている事を意味し、これが赤字となれば海外の資金に頼らなければならない状態という事で、もっと簡単に言うと、国内のお金が海外に流出しているという事にもなる。
日本の借金は1000兆円といわれており財政は火の車ですが、それでも大きな問題にならないのは、そのほとんどを日本国民の金融資産1400兆円でまかなえているからであり、要は「日本の借金を日本人からしているから、とりあえず大丈夫」という状態。
しかし経常収支の赤字が常態化すれば日本の資産が海外に流失している事になりますから、近い将来日本の国債は国内だけではまかなえなくなり、海外に買ってもらわなければならない事態も考えられます。
まあ今の日本は年間40兆円前後の赤字国債を発行していますから、仮に経常収支の黒字が続いても、日本の財政問題が問題化するのは時間の問題なのですが、経常収支が赤字化すれば問題化がより早まります。
問題が表面化すれば欧州債務問題時のギリシャなどを見ても分かる通り、国の信頼が失墜し国債は売られ国債利回りは急上昇し、それにより日本は多額の利息を払わなければならなくなり、財政問題はさらに悪化するという悪循環に。
そうなれば日本発の金融不安も現実味が出てきます。
少し前までは「貿易収支は赤字になっても、経常収支が赤字になるのはまだ先」と見られていましたが、予想以上に早い経常収支の赤字に、これからの日本の先行きに不安を感じざるを得ません。
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