ユーロの潜在的な問題
欧州債務問題は2009年10月のギリシャの政権交代の際明るみになった前政権の債務の粉飾が発端だという事は前ページで書きました。
しかしそれはあくまでも「引き金」に過ぎないと私は考えています。
そこには「ユーロ」という特殊な形態の通貨が潜在的に持つ問題が深く関わってくるのですが、ではまずユーロを法定通貨としている17の国を見てみましょう。
2012年1月現在ユーロを正式に採用している国は右図の17ヶ国です。
一般的には一つの国につき一つの通貨を採用するものですが、欧州各国は経済や為替相場の安定などを目的に統一通貨ユーロを導入します。
統一通貨とする事で各国の経済格差は少なくなり、また「ユーロ圏」という大きなマーケットとして国際的に大きな存在感を示す事に成功しています。
一方で経済規模、経済情勢などが異なる17ヶ国がユーロという統一通貨を使い、その金融政策は欧州中央銀行(ECB)に委ねられているという面がネックになる場合も多くあります。
17ヶ国もの国が集まれば景気の良し悪しなどは国によって当然異なってきますが、ユーロの金融政策を行うのはあくまでも唯一ECBであり、経済情勢の異なる17ヶ国で画一的な金融政策を採用する事になります。
例えば「ユーロ圏全体でインフレ率が2%を超えているから金利を上げて引き締めよう」となった場合でも各国を個別に見れば、ほとんどインフレの見られない国もあるでしょうし、インフレ率が5%にも6%にもなるような国もあったりするでしょう。
一般的な国は中央銀行が金融政策を決めるわけですが、一国の金融政策ですら難しい舵取りを要求されるのに17ヶ国もの国が採用している通貨の金融政策をひとつで賄おうなど素人考えでも明らかに無理がある。
そういった無理のある状況にリーマンショックなどの金融不安と景気悪化が重なり、ここに来てそのひずみが顕在化してきたのが今回の欧州債務問題なのではないでしょうか。
1999年にユーロが導入され13年が経ちましたが、今がまさに正念場と言えるでしょう。
では次のページでは今回の欧州債務問題への各国の対応を見ていきたいと思います。
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