結論!証券口座はこれを選べ
株式投資を行うために開設する証券会社の口座には一般口座に加え2種類の特定口座が存在し、どれを使うべきか悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
悩ましい点は以下の2点。
- 一般口座と特定口座、結局どれが良いのか?
- 源泉徴収ありと源泉徴収なしはどっちが良いのか?
結論から言えばこれらは「人や条件によって違う」と言わざるを得ないのですが、そのへんを私なりの解釈を元にそれぞれのメリットデメリットに加え、どういった人にどの口座が向くのかなど詳しく説明します。
一般口座のメリットデメリット
まずは特定口座ではない一般口座から見てみましょう。
一般口座は利益や損失はダイレクトに反映され証券会社が何らかのアクションを起こすこともない、本当に普通の口座。そのメリットデメリットはというと…
- 年間利益が20万円未満なら何もする必要がなく丸儲け
- 年間の利益が20万円を超えたら確定申告が必要
- 確定申告の際、年間取引報告書を自分で作成しなくてはならない
では一つひとつ見ていきましょう。
一般口座のメリット
一般口座のメリットはたった1つ、年間利益が20万円未満であれば丸儲けという点。
株式投資の利益が年間20万円未満であれば確定申告や納税の必要もないため、積極的に売買を行わない、もしくは少額の取引しかせず年間利益が20万円を超える見込みがない場合は一般口座で問題ありません。
ただ、「20万円未満であれば丸儲け」という点は特定口座の源泉徴収なしでも同様なので、これを目的に一般口座を選ぶ理由はないというのが実情。
一般口座のデメリット
一方で一般口座のデメリットはというと、まず年間利益が20万円を超えると確定申告の必要があるという点です。
これに関しては源泉徴収なしも同様なのですが、一般口座で年間利益が20万円を超えてしまった場合1年間に行った取引の詳細を記載した報告書を自分で作成し確定申告時に提出する必要があります。
それは年間の取引で発生した利益や損失、手数料、配当に加え、信用取引であれば金利や貸株料など事細かく計算する必要があり、それを間違えてしまうと税務署から恐怖の“お尋ね”が来る可能性も。
取引が少ない人であればまだしも、デイトレードなど短期売買を繰り返して利益が20万円を超えてしまったなんてケースで取引報告書を自作することになったら…地獄です。
特定口座:源泉徴収ありのメリットデメリット
では次に特定口座の「源泉徴収あり」を見てみます。
- 証券会社が年間取引報告書を作成して翌年1月末までに郵送してくれる
- 年間利益が20万円を超えても基本的に確定申告の必要はない
- 確定申告をしなくていいので扶養から外れる心配がない
- どんなに利益を上げても健康保険料が増えることはない
- 年間利益20万円未満でも証券会社で引かれた源泉徴収税は戻ってこない
- 利益が出ると即座に源泉徴収されるため資金効率が悪い
基本的にメリットが多いものの、利益が20万円を下回るとデメリットが目立つというのが特徴になる源泉徴収あり。詳細を見てみると…
特定口座:源泉徴収ありのメリット
特定口座の場合、源泉徴収のありなしにかかわらず一般口座では自分で作成する必要がある年間取引報告書を証券会社が作成してくれるというメリットがあります。
しかしこれは源泉徴収なしでも同様であり、特定口座の最大のメリットはなんといっても確定申告の必要がないという点に尽きます。
これは確定申告の手間が省けるというセコイ話ではありません。
証券会社が税金の天引きを行ってくれる源泉徴収ありではどんなに利益を上げても収入として計上されることはなく、株式投資の税金である約20%(所得税15%+住民税5%)以外のものを課せられることはありません。
分かりやすく書くと、普段の仕事で年収500万円貰っている人が株式投資で1億円の利益を上げたとしても、取られる税金は証券会社で源泉徴収される約2000万円だけで健康保険料に株の収入が反映されることはないのです。
もしこれが「源泉徴収なし」の場合は自分で確定申告する必要があるため、収入は1億500万円となり、株式投資の税金2000万円はもちろん健康保険料は上限額が課されてしまいます。
生活の中で一定の所得以内なら恩恵が受けられるケースでも源泉徴収ありであれば株式投資の利益は収入に反映されないため、そのまま恩恵を受けられます。
利益が多ければ多いほど確定申告しないで済むメリットが大きくなる…それが特定口座の源泉徴収ありの最大の特徴かつメリットになります。
仕事をしていない人であれば年収は実質0円ということになりますので、専業主婦が株で1億円稼いだとしても源泉徴収ありなら夫の扶養から外れることはありません。
ちなみに「確定申告の必要がない特定口座の源泉徴収ありに年間取引報告書なんて必要ないだろう」と感じるかもしれませんが、年間の損益がマイナスだった場合は損失の繰越控除を行うことができますので、損した年は年間取引報告書を使用し株式の損失を確定申告しておくべきでしょう。
特定口座:源泉徴収ありのデメリット
特定口座の源泉徴収ありには確定申告しなくていいという反則級の大きなメリットがあるのですが、デメリットももちろん存在します。
最も特徴的なのは利益確定するたびに約20%の税金が引かれてしまうということ。
それがあるからこそ源泉徴収ありは確定申告をしなくて済みますし、そもそも投資の税金は支払う必要があるものなので、問題ないように感じる人もいるかもしれません。
確かにこれ自体問題はないのだが、年間利益が20万円未満の場合は話が変わる。
一般口座のところで書いたように年間の利益が20万円未満の場合は確定申告も納税の必要もありません。しかし特定口座の源泉徴収ありだと確定申告時に税金を引かれるため、年間の利益にかかわらず約20%が引かれることになります。
仮に年間の利益が確定申告の必要がない20万円弱だとして、引かれる税金は約4万円。そしてそれはどんなことをしても戻ってくることはありません。確定申告や納税の必要がない額だからと証券会社や税務署に訴えても戻ってくることはありません。
そう、年間利益が20万円未満の場合、源泉徴収された税金は完全な払い損になってしまうのです。まあ、20万円超えればいいだけの話なのですが、儲かるか損をするかは蓋を開けてみないと分かりませんからね。
また、もうひとつのデメリットに「資金効率が悪い」という点が挙げられます。
一般口座や特定口座の源泉徴収なしであれば利益はすべて余力に反映されますが、源泉徴収ありだと利益から税金を約20%引かれるため、一般口座や源泉徴収なしに比べ余力が少なくなってしまうのです。
例えば100万円で買った株を110万円で利益確定したとします。一般口座や源泉徴収なしなら110万円を次の投資に使用できますが、源泉徴収ありなら利益10万円から2万円の税金を引かれ108万円になってしまうということ。
遅かれ早かれ払う必要がある税金ではあるものの、納税を後回しにし利益を次の投資に100%使える一般口座や源泉徴収なしのほうがチャンスが広がるのは間違いない。
- 源泉徴収ありは確定申告の必要がなく健康保険料などにも反映されない
- 年間利益が20万円未満の場合、税金の払い損になる
特定口座:源泉徴収なしのメリットデメリット
最後は特定口座の「源泉徴収なし」です。
- 証券会社が年間取引報告書を作成して翌年1月末までに郵送してくれる
- 年間利益が20万円未満の場合「源泉徴収あり」のような税金の払い損がない
- 年間利益が20万円を超えると確定申告を行い税金を納める必要がある
- 利益の額によっては扶養から外れてしまう場合も
- 確定申告をすると健康保険料が増える
特定口座の源泉徴収なしは一般口座と源泉徴収ありの中間のような位置づけで、一定の条件下においては最も無駄のない選択となります。
具体的なメリットデメリットを解説すると…
特定口座:源泉徴収なしのメリット
特定口座の源泉徴収なしは一般口座と同じように証券会社が税金を徴収するようなことはない一方で、年間取引報告書を作成して送付してくれるという特徴があります。
年間の利益が20万円を超え確定申告をする必要があるケースでも自分で取引報告書を作る手間が省けるため、デイトレードやスキャルピングなど短期売買を数多く繰り返す人にとっては非常にありがたいはず。
また、証券会社は源泉徴収を行わないため、年間利益が20万円に満たない場合は「源泉徴収あり」のような税金の払い損がないというのも大きなメリット。
取引回数が少ない、もしくは取引額が少額で年間利益が20万円を超える可能性が低い場合において最も適した口座と言えるでしょう。
特定口座:源泉徴収なしのデメリット
年間利益が20万円未満であれば最も魅力的と言える特定口座の源泉徴収なしですが、このラインを超えると状況は一気に変わってきます。
特定口座であるため一般口座のように年間取引報告書を作成する手間は省けるものの、年間利益が20万円を超えれば確定申告を行う必要があり、約20%の税金を支払う必要が出てきます。
確定申告をするということは、その収入が納税などの対象になることを意味していますので、扶養に入っている場合は利益の額によって外れてしまう可能性があります。
特にパートなどで扶養に収まるようギリギリの範囲で働いている場合などは、20万円の利益を確定申告しただけで扶養から外れてしまうケースも。一定の所得以内なら恩恵が受けられるようなケースでは株の利益によってそれをオーバーし思いがけない損失を被る可能性もあります。
また、確定申告した株式投資の利益には健康保険料もかかってきます。何かしらの収入があるなら、それと株の利益を合算してこれらの税金が決定されることに。
数十万円くらいの利益であれば住民税や健康保険料の上乗せ分はたかが知れているでしょうが、額が大きくなれば相応の額になってきます。
年間利益が20万円未満であればベスト。それが特定口座の源泉徴収なしになります。
結局どの口座が良いの?
長々と説明してしまった上にちょっとややこしいので混乱しているかもしれませんが、簡単にまとめると下記の通り。
一般口座のメリット
- ■20万円未満なら税金を払う必要がない
特定口座:源泉徴収ありのメリット
- ■確定申告の必要がない
- ■年間取引報告書を証券会社が作成してくれる
- ■どんなに稼いでも扶養から外れない
- ■どんなに稼いでも健康保険料は上がらない
- ■利益が収入に反映されないため所得制限に引っかからない
特定口座:源泉徴収なしのメリット
- ■20万円未満なら税金を払う必要がない
- ■年間取引報告書を証券会社が作成してくれる
…といった所です。
一般口座の唯一のメリットは年間利益が20万円以下なら税金を払う必要はないというものですが、それは特定口座の源泉徴収なしも同様であるため、ハッキリ言って一般口座を選ぶメリットは何もありません。
株式投資は利益が出る可能性がある反面、損失の方が多い可能性もあり、そういった時には年間取引報告書を添えて確定申告することで「損失の繰越控除」という制度を利用できるのも大きなメリット。
年間利益がマイナスだった場合は確定申告をしなくてもよいのですが、年間取引報告書を添えて損失の確定申告をしておくと、向こう3年間で利益が出た場合、損失と相殺でき、その分の税金は払わなくて済むのです。この損失の繰越控除に関しては別のページで詳しく説明します。
つまり年間損益のプラスマイナス、源泉徴収のありなしにかかわらず年間取引報告書を作ってもらえる特定口座にしておくべきだというのが私の結論です。
特定口座はどちらを選ぶ?
特定口座の源泉徴収あり・なしのどちらを選ぶかは悩ましい問題かもしれません。
しかし、投資は思わぬ利益が出る可能性もありますので、投資額が数十万円程度で、かつ取引の回数が少ないという場合を除き源泉徴収ありにしておくべきと考えます。
年間利益が20万円未満の場合税金の払い損になってしまうのは痛いところですが、それを恐れて源泉徴収なしにしていた場合、20万円を超えれば健康保険料や扶養、何らかの所得制限にも影響してくるので、気兼ねなく取引するためにも可能な限り源泉徴収ありにしておきましょう。
当然ながらIPOの利益なども勘案されるので、もし人気の銘柄に当選したら一発で20万円を超える可能性が高いことも忘れないで下さい。
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